Charlotte Weekly 1996.11.17.号 通巻 第16号

インターネットをめぐる戦い その3

電話会社とプロバイダーの戦い

こちらで生活して、はや1年過ぎました。この間、車の走行距離を調べた ところ家内の分と合わせると1年間で5万キロを超えていました。日本では 年間1万キロ走っていましたので、その5倍です。これは、米国の面積が日本 の面積の24倍ということを考えますと、ちょうど面積の1/2乗となりまして、 数字としてはなんとなく論理に合う点、妙に納得しております。それにしても、 いろいろなことで、走り回ることが多いところです。

さて、今週は電話会社とプロバイダーの戦いをご報告致します。 まず、プロバイダーというのは、企業や個人と契約して、インターネットに 接続することを請け負う企業です。ここで、メールやホームページやID アドレスなどが管理されます。これは日本も米国も変わりません。そして プロバイダーは、電話会社と契約して回線を購入します。ですからそのプロバ イダーによって確保された回線の本数と、使う人の人数により、アクセスした ときに早いとか遅いとか感じる影響が出てきます。

いずれにしろ、インターネットを使うためには、プロバイダーと契約して、 接続先を決めます。そして家からそのプロバイダーまでは電話でつなぐことに なるわけです。米国ではパソコン通信の会社であるアメリカオンラインとか コンプサーブとかがプロバイダーもやっていて、現在でもインターネットに つないでいる人(企業)の40%程度は、ここと契約しているそうです。 これは、パソコン通信の時代から引き続きやっている人と、簡単に接続できる 手軽さが受けて、お客を掴まえています。

もう一つは、プロバイダーというビジネスを生業としているところもあります。 もともとはあまり大きくないビジネスでしたが、業者の数はたくさんあります。 ここに、最近はAT&Tまで参入してきて、結構な競争になっています。私の 加入しているプロバイダーは、今年5月に契約した時は月25ドルでしたが、 今月から一方的に「値下げ」が通告されて、今は月20ドルです。それだけ 競争が激しいことがわかります。

以前にもご報告しましたように、米国ではほとんどの州が市内通話は、基本 料金だけで使用無制限です。基本料金がこれまた20ドルくらいですから、 市内に接続できるプロバイダーがあれば、40ドルでインターネット無制限 利用が可能になります。そうすると人によっては1日中つなぎっぱなしという 人も出てきます。

ここからは、インターネットの本場というべきカリフォルニアの話しになるの ですが、地元の電話会社(Pacific Bell)が、つなぎっぱなしのお客が増えて、 回線利用の効率が悪くなり、インターネットの利用には時間による課金を連邦 通信委員会に申し入れています。 今のところ課金の案では3分で1セントですから1時間で20セント程度を 要求しているようです。(比較のため日本の市内電話は1時間200円です) この動きに対して、インターネットを広めつつビジネスをしているアップル コンピュータとネットスケープ社そしてアメリカオンラインは反対の意向を 表明しています。(もちろんプロバイダー会社も反対しています) 連邦通信委員会は来年半ばまでに、結論を出すということで、現在この問題に 取り組んでいます。(以上AP-DS-11-08-96 1817ESTからの引用です)

1980年代には、学術研究用に始められたインターネットですので当然課金 などということは、論外だったと思います。しかし昨今の状況は、学術利用 だけでなく商用ベースも数多くインターネットに取り込まれています。 ですから、今までのシステムを見直すことも確かに必要になってきています。 既存のインフラを維持する側と既存のインフラの上に新しいものをどんどん 乗せる会社との新たな戦いが始まっています。

この件に関しては面白い話があります。 今年の初めにインターネットの権威といわれる人(名前忘れました)が、 インターネットの普及が早すぎて、今年中にインターネットで電話回線は パンクするという論文を発表しました。その人は更に、もしそうならなければ、 その論文を食べてもよいとまで約束したそうです。

たしかに、インターネットは猛烈な勢いで広がっていますし、回線はどんどんふ さがっています。しかし、なぜかそれに合わせた拡張も進められていて、 どうやらこの人は、自分の論文を食べなければいけなくなりそうです。 (私としては、紙の論文は当然食べられると思うのですがインターネット上の 論文だとしたらどうやって食べるのか、とても興味があります)

そのように権威といわれる人でも予測のできない速さと、対応で進んでいる インターネットはますます、ネットワークとしての機能を広げつつ、近い うちには今の電話のように、各家庭に接続され使用されるようになるでしょう。 その時、電話線から、電話を超えるものが現れるという、アラジンの魔法の ランプのようなことが起こるのではないかと、期待しているこのごろです。


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