Charlotte Weekly 1997.07.27.号 通巻 第49号
サービス比較小論
今週は、体験と人間の行動原理をもとにした米国と日本のサービスの比較を ご報告してみたいと思います。
−税務署もサービスという名がついている−
米国では、税金はIRSというところが、審査徴収をします。
IRSはInternal Revenue Serviceの略で、ここには、サービスという言葉が 使われています。米国では毎年各個人が納税申告をします。
ですから、人々は常に自分が払っている税金を知っていますから、政府や州が
公務員を増やしたり支出を増やそうとすると、すぐに文句を言い場合によると
反対行動を起こしたりします。そのため、大統領選挙などでも、「小さな政府」と
ういうのは常に票を獲得するスローガンになります。また、いろいろな数字の計算
をした上で申請書類を作成するのは大変面倒です。ですから米国でパソコンが売れ
ている背景には、このような納税計算をするのに、どうしても必要だから普及して
いるのではないかという人もいます。確かに納税時期になると、 パソコンだけでなく、計算用のソフトウェアも飛ぶように売れます。
こうした苦労を経て、自分の払った税金額がわかると、その使い道には目を光
らせることになるのかも知れません。
−サービスの中味−
このように、サービスと呼ばれる範囲が、ずいぶんと広いのではないかと思わ
れるのですが実際、いろいろな場面で日本との違いを目にします。
日常気がつくのは、飲み物を頼むときです。普通でも、熱いものか冷たいもの
か、冷たいものなら、これこれがあるけど、どれにしますか?とか、コーヒーなら
砂糖は入れるの?ミルクにする?クリームにする?など、実によく聞かれます。こ
れは会社を訪問したときでも、飛行機の中でも、どこでもそうです。ですから、聞
くからにはそれらの好みに合わせられるだけの、材料を準備しています。先日、日
本で飛行機に乗ったときには、烏龍茶かコーヒーかという簡単な選択で、砂糖やク
リームなどは、パック入りで配られていました。これなど、好みをサービスする側
が推測して出しているわけです。しかし、米国では提供する側は、相手の好みを
推定するようなことはありません。あくまで個人に合わせた選択を提供するように
していると思います。このような好みの問題も、日常の飲み物程度の場合にはあま
り大きな問題にはなりませんが、米国のような多民族国家では、宗教上の戒律を守
りながら生活をしている人もいるわけです。そうすると、たとえば、戒律で肉を食
べない人にはステーキを出せませんし、アルコールを飲まない戒律を持つ人には、
無理に勧めるわけにはいきません。どうも、個人の違いとか事情を認めることがサ
ービスの中味を個人個人に合わせることの背景にあるようです。
−お互いの好みを認め合う−
これは日本の新聞からの引用なのですが、米国の学校の卒業生は、担任の先生
の名前を覚えているだけでなく、その人の趣味や、好みまで良く覚えているとい
うことです。日本の卒業生と比べると卒業して時間が経っても随分としっかり覚
えているそうです(これは、日本の文部省が発表したデータだそうです) そうなるためには、どこかで先生が生徒に対して、「私の趣味は・・・」とか
「私は、・・が好きだ」とか言っているはずです。そして生徒もそれを、 「相手を認める一つの習慣」のようなものとして認めて、記憶に留めているの
ではないかと、推定します。(確かそのような場面を、ロビン・ウィリアムス主演
の映画で見たような気がします。Hookではありません、念のため)
この習慣が、日常生活に染み込んでいると考えられると思います。
−相手を意識することが礼儀の社会−
このような観点で考えてみると、日常習慣の中にいくつかそれに対応した行動
が見られます。一つは、普通の場所で相手がいる場合には「Hello」とか「こんにち
は」とか声をかけられることが多いことです。これは、はじめのうちは 怪しいやつではないという安全を確かめる意味合いが大きいかと思いましたが、
どうもそれだけではなく、本来は相手がいるということを認めているというこ
とを声に出して示しているということがわかりました。それに対して、やはり声を
出して応答するのが、礼儀です。
しかし、私も含めてなかなかその対応に慣れきれずに、ぎこちない態度になっ
てしまうのは、今までの習慣でしょうか。意外と、小さな接点ではありますが
結構、生きて行く中では、文字どおり出会いの重要性を考えさせる行動だと 思います。
もう一つは、相手を無視することは、相手に対する侮辱に相当するという思想
があるようです。これは、あまり遭遇したことはありませんが、「無関心」が「愛」
の反対の言葉であるとすると、心が傷を受けることかも知れません。
−サービスはビジネスだけでない−
このように、サービスという断面で考えてみると、ビジネスだけに限定されな
いことであることが分かります。それがないと決して次が始まらないというのが、
サービスの本質ではないかと思います。何をするにもまず「相手を見て」それ
から必要に応じて「相手に合わせる」ということが、根底にあるように思います。
そうすると、相手の違いをはじめから認識しながら進むのが一番合理的でかつ
早いということになります。
−戦への応用−
話が少し飛びますが、このことを孫子の兵法から考えてみるとすると、 「敵を知り、己を知れば百戦百勝する」ということに連なる考えが浮かびあが
ります。この場合、日常生活では相手はいつも敵というわけではありませんが、
日ごろから良く知っているということは、相手の満足を得やすいということに
つながりますから、この関係をうまく築けるということは、ビジネスでの戦が
やりやすくなるのではないかと思います。
人間の本質的な行動パターンは、日本も米国もそれほど大きくは変わらないと
思います。しかし、どれだけ身について行動して行くかは、一人一人でずいぶ
んと変わると思います。米国での、シンプルな率直さを間近に見ることから、
このような根底意識の重要性を改めて認識させられた次第です。
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