Charlotte Weekly 1997.03.30.号 通巻 第35号
木と革のある暮らし
今週は、生活の中の素材としての「木」と「革」を取り上げて、ご報告します。
−木のある生活−
これは、まず、住宅環境からご説明するのがいいと思います。米国の家の庭に
は、芝生だけでなく木も多く植えられています。もちろん、大都会であるNYC 等は高層アパートなどが多くて芝生などはありませんが、これは例外です。
普通の家は、植物で囲まれています。私の知り合いは、独り者で時価6万ドル
の家(と土地)に住んでいますが、芝生と自然に生えていた大きな木と、花に
囲まれた一軒家です。静かな生活環境には、植物が欠かせないという考えの ようです。ですから、その周りの家も、敷地にはすべて植物が植えられていて
そこで生活しています。結果的に、とても静かな住宅環境になっています。
家はというとこれはほとんど「木」で作られています。こちらの個人住宅は、 ほとんどが木造です。たとえ外見はレンガ造りでも、外壁だけで、基本的な 内部の構造は木造というのが、大部分です。
日本の木造建築との大きな違いは、壁で支える構造になっている点です。
日本が、柱を中心として作るのと比べてみると、面白い事がわかります。 まず、柱が無いので部屋の広さを大きくとったりできる融通性があります。
家の中が、柔軟な構造になっているのは、文化的な背景と絡んでいるかも しれません。地震にも耐えられるようですが、風にはあまり強くはないよう
です。
家の建て方も、面白い事があります。日本のように、敷地をすべて更地にする
のでなく、自然の傾斜を利用して家を建てる場合があります。たとえば、斜面
はそのまま利用して、低い側に地下室等を作ったりして、日常の出入りは1F から行い、見た目には二階建てのような建物が結構あります。
素人目には更地にしないという事で、土地の造成コストがとても安くなるの ではないかと理解できるのですが、実際はどうなのでしょうか。日本の宅地
造成コストとの差は、興味のあるところです。
普通の住宅だけでなく、ホテルなども、高層のホテルを除いては、木造のもの が大部分です。ホテルの廊下など、絨毯が無ければ、ギシギシ言うのではない かというような造りです。その意味で、生活の至る所が、木にかこまれている といえます。
庭には、芝生は当然で、花のきれいな木や、草が植えられます。特に、見栄え のする木や、花が実に多く植えられています。Charlotteでは冬以外は、沢山 の花を目にします。今の季節は、桜も終わりまして、花水木と、藤の大木 がたくさんの花を付けています。そして、冬になると薪の暖炉を焚く家が、 今でも少なからずあります。これは、暖房というよりは、暖炉の火を見る事 による精神的な要素が大きいのですが、ここでも、木の生活が顔を出します。
これだけ、木にかこまれているので、米国人は木の取り扱いは素人でも良く できるようです。たとえば、住宅の場合、ログハウスを作る事以外にも、 日常的に、壁のつなぎ目が反ってきたり、天井から雨漏りが始まったりする ことがあるわけですが、米国の普通の人たちは、そのような事があっても ほとんど、自分で直してしまいます。それが、家庭仕事にまめな「お父さん」 の姿として写ります。それは私には、恨めしくもまた、うらやましくも思える わけです。
−革のある生活−
こちらに来て、まず気がついた事の一つが、革の利用の範囲が広い事です。 車や、飛行機のシートも、高級仕立ては皮製です。私は、かなりの静電気発生
人間ですので、車は静電気防止用に革シートにしました。それだけたくさん 使われるので価格も決して高くありません。ミニバンの7人がけシートを全部
張り替えても1500ドルくらいでできました。これは、なかなか効果的でして、
冬でも、車を降りる時にはパチッとなりませんでした。革シートの車を利用 している人は3割以上ではないかと思います。静電気に関しては、むしろ
ホテルの絨毯の上を歩いた後、ドアのノブでパチッというほうが、圧倒的に 多いです。ほかにも革製品はかばんや、コート、財布や手帳、バスケット
ボールやフットボールの球などいろいろありまして、どれも、生活の中で磨か
れた歴史が含まれているように思います。珍しいところでは、縄跳びを探して
いたら、皮製しかありませんとのことで、買わされたこともあります。これは、
使っている間にねじれたりして、機能的には満足できませんでしたが。それに
してもここまで革の利用をとことん考えていると言えます。
これは、西部劇でもおなじみの、牛やバッファローとの生活から来ているで しょう。こんな点で見てみると、米国の素材の歴史は、意外と保守的に進んで
来ているのではないかと思えます。
木といえば、米国の発電所は、現在も石炭による火力発電が過半数であるとの 記事を、読みました。日本では、三井三池が閉山になるというところに来て いるわけですが、随分と大きな違いを感じます。この差が、使えるものは大切 に使おう、と考える「単なる経済性、あるいは保守性」に由来するのか、ある いは「意図的なエネルギー政策」によるものなのか、私にとって、明確では ないのですが、気になる現象ではあります。ちなみに原子力は23%でした。
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