Charlotte Weekly 1997.06.15.号 通巻 第45号

使い捨て文化の実態

今週は、米国を特色づける、使い捨て文化と言うことに、ついてご報告します。 米国=多消費=使い捨て文化という構図をすぐに思い浮かべますが、実態はどう でしょうか。検証してみたいと思います。

−消耗材の分野について−
米国で気がつくのは、紙の使用が多いと言う事だと思います。特に、トイレに 設置されている、紙タオルや、ファストフードで使われる紙ナプキンなどは、 見かけも実態も、膨大な使用量になっているように思います。(年間使用量の データが無いのですが、比較としては米国人は日本人のように、トイレから出て ハンカチで手を拭くと言う習慣はまったくありません。そしてほとんどのトイレ には、紙タオルがきちんと用意されています)ですからこの分野では、使い捨て られる紙の量は日本と比べても、圧倒的に多いと思います。 それから、新聞や 雑誌についてはページと種類が多く、しかも小売りの末端にまでふんだんに積み 上げられていますから、この分野での消費材もとても多いと思います。(データ が無くてすみません)もちろん、日本でも週刊誌は同じように売られています から、どちらが、紙の消費量が多いかは簡単には結論が出せませんが、雑誌の 種類という点から言うと、米国の方が、5倍以上あるような気がします。なにせ、 趣味の世界の本や雑誌がゴマンとありますから。

それから、気がつくのは水の豊富なことです。ラスベガスという砂漠の中の街で さえ、街路樹の根元には散水ノズルが埋め込まれていて、朝夕には街路樹や芝生 に水をやっています。もちろん生活用水は確保された後での話です。私の住む シャーロットでも、木や芝生にはふんだんに水をやっています。むしろ、水を やらずに植物を枯らせたりすると、法律で罰せられると言う人もいます。
それにしても、水はふんだんに使われているなと言うのが実感です。
そして、もう既に浸透しているのですが、セントラル空調と言うのは今のところ、 エネルギー多消費の典型だと思わざるを得ません。だって、家中の調節をまとめ て1個所でするタイプが中心ですから、細かい調整などはじめから考えていない のですから。ただ、これを一度使うともう止められないのも事実です。

−リサイクルは?−
リサイクルは、紙、プラスチック、ガラス、缶についてはきっちり仕分けして 回収されています。そして、利用する紙については、古紙含有率60%とか表示 されて、使用されます。もちろん環境問題に関する意識はあるようです。 特に、最近目に付くのは、ホテルに泊まった時に連泊する場合、毎日シーツを 代えますか?、タオルを代えますか?もし代えなければ25%の省エネルギーに なりますけれど、そして地球を守ろう…という、やんわりした選択を迫るもの です。そのような聞き方は多分、たいていの米国人にはOKだと思います。 決して「押し付け」ではなく「選択(オプション)」の形で一人一人に考えさせ る姿が、米国の教育と重なって見えてきます。いろいろな事を進める上で、 とても参考になります。

−耐久材の使い捨て−
米国の人たちは、形ある物は大切にします。これは、私がこちらに来るまで まったく理解していない事でした。特に車や、飛行機などについては、本当に クラシックなものを、使える状態で持っている人が少なからずいます。 あるとき、近く公園で開かれたこの地方のクラシックカー愛好家の展示会を見る 機会がありました。その時には1933年製のフォードとかが4-50台展示されてい ましたが、どれも塗装は塗り直していますが、エンジンはピカピカで、しかも 走るのです。これは、単なるマニアとしてしまえばそれまでですが、部品を提供 する人、それをすえつける技術などが揃っていないと、このように使えるものは 維持できないと思います。今日も、ハイウェイで、その1935年頃のフォードが 時速65マイル(100Km/h)で走っているのを目撃しました。街中を見ても、1950 年代の車も走っています。この事から考えて、米国には古いものに価値を見出す 思想があるように思います。ただ新しいとか、多機能と言う言葉では、消費者は 踊らない世界であるように思います。その意味で、VTRのプレーヤーなど単純 な録画再生機能のものしか売られていません。多機能、高付加価値も米国では、 相手にされていないというのが実感です。それよりも、価格がリーズナブルであ る事が最優先です。それらも含めて、今の私の感じでは、米国の人は「耐久材」 は大切にすると思っています。パソコンにしても自分でケースを開けて部品を取 り替えてしまう人が5割くらいいるように思います。そして、不都合なところは 自分で直してしまうわけです。それに対応して、メーカーも部品は7年間の在庫 期限などと言うものはなく、それ以上持っているのが普通だそうです。
そうすると、耐久材は大切に使われ、使える耐久材は高く評価されます。
ですから、中古車の価格など、5万キロ走ったものでも新車の50%以上の価格 で評価されています。これなど、こちらでの意外な発見です。

−食べ物の分野−
この分野は、実に無駄が多い事を実感します。何しろレストランのメニューにし ろ売られている商品にしろ、分量が多すぎます。(これは偏見ではありません 本当に多いのです)ですから、たいていの人にとっては、食事をしても食べきれ ません。残りは、捨てられるか、まとめてパックにつめて持ち帰るかですが、 いずれにしろ、もっと減らせる無駄のような気がしています。

この思想の背景は、お買い得の世界の考え方にあります。日本のように価格割引 ではなく、2つ買うともう一つはおまけという方法の割引の世界ですので、価格 が安くなって、余分が増え、そして安いから捨ててもいいやという発想につなが っているのではないかと推定しています。その他にもファストフードでは、 作って1時間経ったら捨てるとかいうことも行われているようですが、これなど、 使い捨てではなく、使わず捨てという、実にもったいないシステムになってしま っています。このあたりは、食べ物に感謝すると言う習慣のない民族と言う気が します。その代わり、米国人は食べ物を単に「物質=エネルギー源」として、 こだわりなく受け入れて、体内に蓄積を重ねているように思います。

日本人は、味覚の繊細さを持ち合わせ、また食べ物に感謝する事ができる数少な い民族だと思います。このあたりは、昔から神様に何をささげてきたかを考える と面白い事がわかります。日本では「収穫物」、古代ギリシャローマ以前では 「いけにえ」であった事などがその差をもたらしているかもしれません。

それでも、食べ物に固執しないせいか、ぜいたくさえしなければ、食費は大変 安い国です。しかも、量が豊富ですから比較的所得の低い層でも、飯の食い上げ を心配するよりは、飯の食いすぎによる肥満を心配する状況です。

編集後記
ここに書いている事は、私の住んでいる周りの事です。先週NYCに行ってきま したが、太りすぎの人は多くありません。やはり、競争の激しいところでは、人々 の生活の仕方が変わっていると言うのを、実感しました。


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