Charlotte Weekly 1997.06.29.号 通巻 第46号

はえたたきのある暮らし

今週は、意外や意外、米国では「はえたたき」が現在でも使われているという 事実をお知らせします。

−ウォルマートにあるはえたたき−
こちらに赴任してきてすぐに、滞在していたホテルに、日本ではすでにお目に かからなくなった「はえたたき」を見つけた時にはちょっと目を疑いました。 もしかして、これは「はえたたき」を掃除の人が他の用途に転用しているのかと 思いました。でもウォルマートに行ったところ同じ形をした「はえたたき」が 置いてあるではありませんか。どうやら、日常的にはあまり見かけなくなった 「はえ」ですが、それでも時々は部屋の中に入ってきます。その時に「退治」 するために、「はえたたき」は用意されているようです。

−害虫駆除の会社−
米国では、「はえ」に限らず、害虫やねずみ、時としてりすなどの駆除を請け負 う会社が沢山あります。街中でも害虫駆除に出かける車をよく見かけます。
このあたりの、考え方はとても明快です。ひたすら、害虫は悪い、しかも気持ち 悪いから退治する、というロジックです。そのせいか、我が家は借り家ですが、 2年弱の生活で今まで1度しか家の中でゴキブリを見た事がありません。どうやら、 本当に家の中にはいないと思います。もちろん私の家族は、ゴキブリ対策など 何もしていません。家庭もそのように徹底されていますから、会社やホテルなど はでも、害虫らしきものはほとんど見かけません。

−害虫に関する意識−
そういえば、これに絡んだいくつかのことを思い出します。もう10年くらい前 になりますが、仕事でお付き合いしていた米国の某コンピューター社の事業部長 が日本に来られて、その時に由緒あるホテルにお泊まりいただきました。その後、 ホテルの感想はと聞いたところ、不快そうな顔をして「ねずみ」がでたと言いま した。それから後、この会社の方々は2度とそのホテルに泊まる事はありません でした。当時は内心「ねずみ」くらいの事でと、考えていましたが、実はそれは 大変な事である事が最近、わかるようになりました。
もう一つの体験。これは、不動産屋のおばさんと話をしていた時なのですが、 窓の内側に小さな「甲虫」が歩いていました。話の途中でその虫に気がついた おばさんはそれまでの温和な顔から突然「仇」にであったような顔つきになり、 手元にあった紙ナプキンをつかむや、その虫めがけて駆け寄り、上から思いっき りつぶしまくっていました。そして、虫を始末した紙ナプキンを捨て終わると、 元の温和な顔付きに戻り、話を続けるのでした。

−善悪二元論−
この傾向は、害虫だけでなく雑草にも適用されます。私の借りている家の大家 さんもそうですが、芝生に生える芝以外の「雑草」はすべて除草剤で退治します。 ここでもやはり、害虫に対するのと同じ発想が見えていると思います。これが 現在のカルチャーのようです。完全に、善悪二元論になっていると思います。 そして、その判断ポイントは「自分にとって」と言う視点です。 そうなると、家の中の虫はすべて害虫となるわけです。

−科学的、哲学的背景が価値観を決める−
この議論を、厳密にやるには科学の歴史と、哲学の背景を理解する事が必要にな ります。早い話、判断はころころ変わっているのが事実です。例えば、以前には 「すずめ」は立派な?害鳥でした。もちろんお米を食べるからです。しかし、 今では稲の成育中に、大量の害虫を食べてくれるので、むしろプラスが多いと 言う事になり益鳥として取り扱われています。この判断として、お米を食べる事 の善悪で使われるロジックは、経済原理(人間の都合)に基づくものであり、 根本的には哲学に由来すると思います。このように、判断の基準として事実の 蓄積が必要なものと、判断哲学としての思考体系は、他人任せではなく、自分で チェックする事が必要だと思います。もちろん、科学は事実の集積に大きな意味 を見出しますし、それが大変な力を持つ事も事実です。しかし、データをまとめ て判断すると言う事には、人間の意図や、思考のパラダイムが入り込んでしまう ところに、限界があるように思います。現在「複雑系」という体系が議論を呼ん でいますが、難しいと思い込まずに、チャレンジされるのはいかがでしょうか。 インターネットで見ていても、面白くないニュースが出てきているようですが、 この際、発生した事象の議論ではなく、根本思考体系に一度チャレンジしてみて はいかがでしょうか。沢山ある本の中でも、「生命論パラダイムの時代」 ダイヤモンド社刊は、イリア・ブリゴージンの散逸理論を基にした、社会経済へ の適用を試みた来日講演のまとめになっています。この理論は私の見るところ 現在の閉塞状況を抜け出る方向に、一つの大きな示唆を与えてくれます。 夏休みの時間をそんな使い方をしてみるのも、精神の旅行と言う大きな楽しみに なるのではないでしょうか。

−休刊のご挨拶−
ご愛読いただいております、Charlotte Weeklyは発刊満1年の50号を持ちまして ひとまず、休刊させていただきます。理由は8/1付けにて私が米国内転勤になった ためです。引越しやら何やらで8月は忙しすぎるので、休刊いたします。
ようやく住み慣れたCharlotteの街なので去りがたくはあるのですが、次の街で Weeklyを興す事と致します。次なる場所は、カリフォルニアのSilicon Valley になります。忙しい場所で、アメリカではないともいわれています。 今までとは、かなり違った内容になるかとは思いますが、9/1より改めて再発刊 する心積もりですので、ご期待ご了解下さい。


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