Charlotte Weekly 1997.03.09.号 通巻 第32号
米国のプロスポーツ
今週は、引き続きエンターテイメントの一つである、米国のプロスポーツに ついて、ご報告いたします。
米国でのプロスポーツで大きなものは、フットボール、バスケットボール、 野球でしょう。この中で特に人気が高いのは、フットボールとバスケット ボールです。これらは、すべて、ある地域のフランチャイズとしてスポンサー を見つけて、チームを作ります。地域というのは大体、市が標準です。そして、 地元の応援を得て、リーグ戦を勝ち抜き、全米一を目指して数多くの試合を します。では、おのおのがどのように絡んで、スケジュールが組まれるか、 そして、観客を引き付け、興行的に成功させるための仕組みなどを見てみたい と思います。
−開催シーズンの割り振り−
これらのスポーツには、割り振りがありまして、プロフットボールは9月から
1月、バスケットボールは12月から4月まで、プロ野球は3月から7月まで、
が標準的なスケジュールです。要するに夏の一時期を除いて、一年中何らかの
ゲームがどこかで行われているということになります。
−ゲームの構成−
基本的には、プロスポーツのリーグは、日本のプロ野球と同じように、2つの
リーグに別れています。しかし、試合はそのリーグの枠に関係なく行われます。
ですから、日本のプロ野球で言えば、セリーグのチームと、パリーグのチーム
の試合が、頻繁に行われることになります。試合は一方のチームの地元で行わ
れますから、地元の応援はひとしおです。そして、各リーグごとのプレーオフ
を経て、全米一を決めます。
−地元の応援とマスコミの対応−
米国は、大きな田舎の集合体という表現がぴったりすると思います。その理由
は、あまり、中央に依存することが多くないからです。たとえば、消費税など
も、各州が決めています。ワシントン州などは0%ですし、NY州は8.5%とか バラバラです。ちなみに、私の住むノースカロライナ州は6%です。話を戻し
ますと、国ではなく州とかに相当な自由裁量権があるわけで、そのことが住む
人たちの声を反映させて「自分たちに住みやすい場所」を作りやすくしている
一つの要因となっています。交通ルールなども、州により若干違っており、時々
出張先で、右折時の信号ルールの違いで、惑わされることがあります。
そして、公立の学校では小学生のうちに、州や郷土の歴史や、仕組みなどを 教えます。これは、なぜか各地域にいる、郷土史の研究家や、ボランティア レベルでのまとめた「郷土歴史書」が学校に置かれいます。もちろん、合衆国 の歴史書もありますが、この郷土の本は、学ぶ上で、身近な人や、場所の話に なりますから、学ぶ人も実感の湧く学習となるでしょうし、ビジネスも、郷土 から出発して、味方を増やしながら進めてゆくのが、米国流です。
−ビジネスとしての側面−
そのような、郷土の理解のもとに、プロスポーツもビジネスとして行われる わけです。地元の新聞は好ゲームの前後には、スポーツ面に大きく地元チーム
を取り上げて、ムードを盛り上げます。特にリーグのプレーオフに、地元 チームが残れそうだと、街をあげての応援になります。では、そのための、
プロスポーツ界の、興行システムを見てみましょう。興行は、入場料収入と TV中継料と、その他チームキャラクターグッズの売り上げなどが主な収入源
です。ここで、面白いルールがあります。それは、地元のチームのTV中継は 入場券が売り切れないと、地元には放映されないのです。これは、システム
として見たとき、とても面白いと思いました。相手のチームの地元では、放映
されることもあり、されないこともありますが、これは入場者数には関係無い
ようです。こんなわけで、いやでも地元の人は、入場するように仕組まれて います。では、TVを見る人は、家でさびしく見るのでしょうか?それも無い
とは言えませんが、何と外で、食事をしながらスポーツを見ることができる 設備があるのです。これは、大きなゲームがある時など、駐車場があふれる
ほど、人々が集まります。そこには100インチくらいの大画面TVと40 インチくらいのTVとが至る所に置かれていて、ビールを飲んだり食事を
したりしてゲームを楽しみます。雰囲気は、ゲームを楽しむ感じが強くて、 いいプレーが出ると、ひいきチームでなくても、よくやった!とほめる人たち
が多いです。そして、米国人はひいきチームの野球帽をかぶり、芝刈りや買い
物などの日常活動をします。これらが、プロスポーツのビジネスの中心と言え
ます。
−プロ選手への道−
プロ選手はTVでも活躍しますし、有名な選手では年収が1億円から100億円 くらいまで幅広く取れますので、子供たちのとっては、憧れのスポーツの一つ
です。そして、学校でもフットボールや、バスケットボールはとても人気の ある種目です。(最近は、学校では野球の人気が下がり、代わりにサッカーが
人気を集めているようです)その意味で、学校でもフットボールと、バスケッ
トボールは、力を入れる種目で、地元紙は高校生の試合結果は、毎回説明付き
で記事にしています。そのあと、大学のチームで活躍して、プロへと進む人も
出てくるわけです。そのような環境としては、私の家の周りには、半分以上の
家にバスケットゴールがありますし、公園などでも、子供たちで試合をして いる姿をよく見掛けますし、一人一人がとても上手です。
フットボールは、その点大変特殊で、学校とかきちんとした施設のあるところ
で行われます。大体、大学での活躍が選手への道のようです。
−技術とチームワーク−
プロスポーツで面白いのは、監督、あるいはコーチは'試合の時には、スーツ を着て、ネクタイをしていることです。これは、相手に対する儀礼に意味が
強いらしいのですが、スポーツウェアの選手に混じり、スーツ姿は、どこか 違うような感じがしますが、個性的で技術も優れた選手達をまとめて、試合に
勝つようにするのは、大変な能力が必要だと思います。普通は、学校では、 生徒達を集めても、バスケットボールなど、チームとして試合ができないほど、
バラバラになるそうですから。
−今後のプロスポーツ−
これは、3年ほど前のプロ野球選手のストライキ、が典型的な例だと思います。
やはり、選手がどんどん高給取になり、人件費の負担が急増しています。 その割に、観客やTVでの収入が増えなければ、どうしても経営は悪化して
ゆきます。ですから、その中で「スポーツに情熱を持った人」と「ビジネス としてスポーツを選んだ人」とが出てくるわけです。ドジャースのオマリー
会長のようにあまりにビジネス化したプロ野球に悩み、球団を手放すところ にまで来てしまう人もいるわけです。その意味で、プロスポーツはもはや同じ
ような高成長が望める世界ではないように思います。
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