Charlotte Weekly 1997.04.27.号 通巻 第39号
ただの情報、有料の情報、その中味は?
今週は、情報の値段とも言うべき項目について、ご報告いたします。
この中味は、米国の社会の一つの構図が写し出されていて、日本の現状と比べて
みると、何か示唆的です。
−ただの情報の種類−
米国では、ただの情報はものすごくたくさんあります。例えば、こちらの観光
案内図などをサービスセンターでもらうと、とても詳しくて正確な情報が載った、
最新版のパンフレットを入手する事ができます。場合によると、地図なども とても正確できれいで、おまけにレストランなどの割引券などが付いている事
すらあります。これは明らかに、宣伝でただでなければ「受け取ってもらえない」
情報です。これは昔からあるタイプの、宣伝方式です。
次に、中古車や家の情報があります。これはスーパーなどで出入り口に置かれて いて、興味のある人は持って帰ります。これも写真などがいっぱい入っていて なかなかきれいにできていますがただです。このスポンサーは売り手であり、 具体的には車や家のディーラーが出資しています。
その次は、オピニオン紙です。これは、実に多くの種類の情報紙が出ていて、 私の手元にあるものをみると、市政を監視するオピニオン紙、老後の生活ガイド、 子供の安全広報紙、アジア人のための刊行紙(韓国の協会が発行している) 求人ガイド、同性愛者の権利を守れというキャンペーン紙、実にいろいろです。 これらの刊行物は、ただですし広告の掲載よりは、言いたい意見の方が、圧倒的 に多い割合を占めています。その点、どうして無料配布を継続するのが可能なの か、私には、今でも十分には理解ができていません。
さらに、ラジオの放送も宣伝無しでただのものがあります。私は、こちらの89.9 MHzのクラシック専門局がとても好きです。ここには、モーツァルトカフェと いうとても素敵な番組がありまして、米国でもモーツァルトは別格で尊敬されて いる事を、実感するのであります。これらは、宣伝広告費はありませんから、 どこからか、スポンサーを見つけてこなければなりません。それが実に、視聴者 からなのです。
TVはというと、これにもやはりただの「広告無し」の番組があります。 すぐ思い浮かぶのは「C-SPAN」という草の根Information番組です。これは、 ひたすら議会中継をしている番組です。ワシントンで家族3人で運営されている というのを、本で見た事があります。ひたすら、議会中継や議員の街頭演説など を淡々とやっている番組です。はじめは、こんなつまらない番組をなぜやるのか、 理解に苦しみましたが、じつは、こんな事が当たり前と言う事自体、ものすごい 事であるのがわかりました。日本で、国会中継は時々ありますが、米国では地方 の議会の中継まで行われます。最近ケーブルテレビのチャンネル割り当ての変更 がありました。このC-SPANというチャンネルは、C-SPAN2という枠までもら って、ますます放送の機会を増やしています。これは、草の根でも視聴者が多け れば、枠が増やされるという事をあらわしています。それだけ、見ている人が いるという事でもあるわけです。
今のところ、インターネットのマスメディアなどの大部分も、無料の情報に該当 します。
−制作費や人件費はどうやって集めるか−
このような、配布紙や放送でも当然コストはかかるわけですから、かかる費用を
どこかから集める必要が出てきます。もちろんオピニオン紙などは、主張する
団体が自分でスポンサーになったり、賛同する人々に資金協力を求めたりする事
になります。詳しい事はまだ調査中ですが、かなりの部分が寄付によるのでは
ないかと推定しています。といいますと、最近とくに増えているのがNPOと いう、非利益団体の活躍です。これらは、インターネットやボランティア活動を
支える大きな部分を占めてきています。これらは、NPOとして登録されて、 いくつかの経済的な特典などが与えられるようです。ただし、運営資金は自分で
調達をしなければなりませんので、それなりに資金集めをします。
一つは、賛同者からの寄付によるものです。私の好きなFM局では年に2回寄付
キャンペーンをやっていまして、運営費の60%位を集めているようです。残り は、政府の援助だというような事を、言っておりました。寄付金額は1口65
ドルでしたが、結構電話での申し込みも多くあったようです。
オピニオン紙は、内情が明確ではないのですが、やはり賛同スポンサーによる
ものと思われますが、先ほどのNPOに対しての援助と同じようなものが、 こちらの場合にも当てはまると思います。しかしそれにしても、沢山のオピニオ
ン紙が定期的に出されているのには、感心します。
オピニオン紙は、普通20ページくらいあります。使用している紙の質は良く ありませんし、見かけも良くありません。でも、多くに人に行き渡るには十分の
量が置いてあります。
また、ラジオ放送などでは、聴取者を集めた、音楽鑑賞会や講演など常に地域の 人々に密着した活動が行われています。このような地道な活動と共に、多くの人 に、いろいろと楽しんでもらったり、志を伝えたり、活動が維持されて行きます。
−有料の情報−
これは、身近にはお医者さん、弁護士さんなどの相談料がそれに相当します。
また、調査情報など有料で請け負うところはたくさんあります。
しかし、これらはお客の利益にならないと継続的な収入にならないので、 多くは調査会社や、コンサルタントの形をとります。雑誌やレポートなども
それに該当します。あまり実際に使った事はないのですが、とてもきれいなレポ
ートで、中味が薄いものや、高くて有用なものなど、ピンからキリまでという
話を良く聞きます。米国では、調査部門をもたない会社が多く、調査が必要な
場合には、必ず外部に委託をするわけです。ですからコンサルタントもいい アイデアが当たれば、ビジネスが広がりますので、一生懸命やるそうです。
そういえば、最近出張で飛行機に乗りあわせた隣の座席の人の職業は、2回続け てコンサルタントでした。こんなところにも、情報を有料でやり取りする世界が 見えます。彼らの話を聞くと、米国では調査を外注にしながらも、かなり大きな 会社方針の決断が行われている様子も見られます。日本では、自分の会社内での 情報を中心に経営されますが、随分と異なる世界である事を、実感します。
いずれにしろ、情報というのは「使う人」が価値を決めるというのが、正しい ようで、それを元手にお金を増やそうとする時には、対価は必然的に高くなり、 志を伝える場合には「志」のレベルになるのではないかと思います。
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