Charlotte Weekly 1996.08.25. 号 通巻 第4号

米国での喫煙の実態

今週は、クリントン大統領が、ある法案に署名しました。それは、たばこは ティーンエイジャーにとって、「ドラッグ=麻薬」であるので、たばこ会社は、 青少年の目に付くところに、かっこいい宣伝などしてはいけないという内容です。 当然、今年の大統領選挙を意識しての行動も含まれている訳ですが、なぜ企業を 責めてゆくのが選挙戦に有利と考えているか、米国での禁煙の位置づけをご報告 してその思想の根底に近づきたいと思います。

まず、たばこが体に悪いことは、多くの医学データによって報告されており、 これはもはや常識です。その時に、それに対してどのような態度を取るかで、 この問題への対応行動が変わります。ここで、随分と価値観の違いが現れる ように思います。米国では州によって、喫煙の規制方法が少しづつ違っています。 全体的にオフィスや公共の施設では、ほとんど建物の中は禁煙です。 ですから、たばこを吸う人は、屋外へ出てたばこを吸います。 またレストランでは、喫煙席と、禁煙席を分けているところが多いです。

その時の論理は次のようなものです。 1. たばこは体に悪い。だから、吸わない人は吸う人から害を及ぼされる理由はな い。 2. そのために物理的に隔離できないときには、喫煙を禁止しても喫煙者の権利を 侵したことにならない。 3. 特に青少年には、百害あって一理なしなので、全面的に禁止するべきである。

これが、大多数の世論のようです。もちろん、たばこ生産者が経済的な打撃を 受けることは事実ですし、TVニュースや新聞記事に載りますが、今回の提案は、 青少年をたばこの害から守るという、大義名分があるため、表立った反発はしに くいようです。特に、具体的な数字はつかめていませんが、青少年のたばこ購入 額は、たばこ売り上げ全体の2−3割を占めているともいわれており、 売り上げに対する影響は決して小さくないでしょう。しかも、今回は青少年をむ しばむ「たばこ=麻薬」というロジックでにつながっています。 しかも、最近の裁判でたばこ会社に不利な判決が出ました。それは、ある喫煙者が 肺ガンにかかり、その原因がたばこ会社にあると訴えて、裁判所はたばこ会社に 約8千5百万円の支払いを命じました。たばこの箱には、当然例の「喫煙は健康 に悪くガンになる恐れがある」とかいう表示がある訳ですが、この判決ではこの 程度の表現では、因果関係の説明が弱すぎるというのが判決の根拠でした。 ここまで来てしまうと、たばこ会社ももう大変という感じです。日本ではあまり 考えられないようなケースですが、ロジックを押し通したときの、ひとつの行き 着く先であるということになるようです。

私の周りの人たちは、喫煙率という見方ではそれほど日本と違うようには思えま せん。男性で4割位でしょうか。女性は日本より高く2割以上あるように 思えます。たばこの値段は、1箱20本入りで$1.2位です。個人が運転する車の中 では、自分の好きで吸うことができます。しかし、吸い殻を車から外へ投げ捨て ることは、罰金の対象になっており、あまり、投げ捨ては見かけません。

コロンブスの新大陸発見と同時に、アメリカインディアンからたばこがもたら されたと言われていますが、その発祥の地で、また一つの大きな流れが変わろ うとしているように思えます。


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